ウッドショックのこれからをJPRが読み解く

木材価格が4倍に高騰

2021年4月から急上昇した輸入木材価格ですが、5月には更に一段高となり昨年と比べ約4倍の価格になりました。

足元ではパニック的な買いから落ち着きを見せていますが、高止まりの状況が続いています。

J-GRADE(日本向け木材)の取引相場は約4倍に高騰し高止まりしている 

出典元:三井ホームコンポーネント株式会社

すべてはコロナ発、アメリカから

2020年、コロナウィルスの蔓延が始まるとアメリカの都市部ではロックダウンが厳しく行われ、テレワークが一気に普及しました。一過性のものと誰もが信じていたのが想定外の長期化となり、恒久的なテレワークを打ち出す企業が多数出てきました。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグが「上司の承認があれば全員が永久に自宅から仕事できる」と発表したことはアメリカの状況を表す象徴的な動きとしてニュースになりました。

テレワークが常態化すると、もう都市部に住居を構える必要がありません。アメリカの都市部から、昨年夏以降に郊外で一軒家を購入する動きが急加速しました。それによりカナダを中心とした北米の住宅用木材のアメリカ国内での需要が高まりました。同様の現象は中国でも起こっています。

さらに世界的なコンテナ不足も要因として絡みあい、世界各国が北米の木材を奪い合うような状況が生まれました。それに追い打ちをかけているのがコロナの初期にあった「マスク不足」の騒動と同じ仮想需要です。実際は供給できる材料があるにも関わらず、先行きの不透明さに対する報道が過熱したことで、品不足の危機感がさらに価格を押し上げるという悪循環にはまっています。

では国内産の木材に切り替えたらどうか。残念なことに思ったように切り替えられません。なぜなら国内の森林に資源は充実しているものの、木材生産に従事する人手は限られており、急激に木材需要が増えたからといって、すぐに増産できるような体制が取れないのが現状だからです。

木材製品の価格が上昇

もっとも影響をうけるのは木造住宅です。木材需要の約6割を北米からの輸入材に頼っている日本国内は一気に木材不足に陥りました。そして国産材の供給も追い付かず、21年春頃から「受注はしたが木材が手に入らず着工できない」状況も生まれています。

影響は住宅以外にも及んでいます。国内の畜産農家は畜舎の敷料に使うおが粉や木材チップを入手しにくい状況に陥り、4月頃からは一部の地域で価格が上昇。農家からは価格高騰、木材不足の長期化と畜産経営への影響などを懸念する声も聞かれます。

ウッドショックのこれから

木材価格高騰の要因の1つであったコロナによる世界的なロックダウン、2月の北米寒波による混乱等で発生した海上輸送コンテナ不足は徐々に改善されつつあります。
また、アメリカ総務省が6月23日に発表した5月の新築一戸建ての住宅販売件数は前年比で5.9%減少し、2020年5月以来の水準となっています。

需要が高まったことによる住宅価格の高騰が起きており、消費者の住宅購入意欲が弱まったとの指摘もあります。

しかしながら、世界的にはアメリカ、中国、欧州の需要は変わらず旺盛であり、当面の間は在庫不足が継続し高値推移すると予想され、元の価格まで戻るのは数年先、もしくは戻らないと予測します。

国産材も値上がり傾向にあり、年末に向けての価格上昇と品薄は続くものと予測します。

2021.7.7 日本パレットレンタル株式会社 五十嵐誠