物流用語の基礎知識④ モーダルシフト

モーダルシフト(modal shift)とは

国土交通省が推し進めているモーダルシフト。語源は「モードを転換(シフト)する」です。都市間の貨物輸送をトラック輸送から鉄道や船舶にシフトする輸送方式の変換を指します。

旧運輸省が1990年代前半に、高速道路の交通渋滞緩和やトラックの排気ガスを抑えるために新しい物流政策として打ち出しました。

具体的には、都市間や臨海工業地帯の貨物鉄道、内航海運とトラック輸送を機動的に組み合わせることで、効率的な貨物輸送システムを確立しようというものです。

現在は、国土交通省が温室効果ガスの排出削減による地球温暖化の防止と低炭素型の物流体系の構築を図るため、物流に係る関係者によって構成される「モーダルシフト等推進事業」を組織し、助成をすることで推進を図っています。

写真:2018.1月 JPR加藤星皓撮影(ページトップの写真も同様)

モーダルシフトに対する期待

近年、運輸業・郵便業において労働者が不足していると考える事業所割合が、全産業の平均を上回る形で増加しています。中でもトラック運送業界においては、人手不足を感じている事業者が半数を超えており、特に深刻と言われている中長距離のトラック乗務員不足対策として、大量輸送機関である鉄道へのモーダルシフトは効果的です。

<鉄道輸送に関心がある理由ベスト5>

資料:平成27年国土交通省作成「モーダルシフト促進・諸問題に関する検討会」資料より

進み具合は (機関別貨物量データ)

モーダルシフトの現状を見てみましょう。国土交通省の平成27年度調査による機関別の貨物量データを紹介します。

資料:平成27年国土交通省 品目別輸送機関別貨物量(全国輸送量)データを参照し弊社にて作成

上の図のとおり、鉄道の割合はたった1%です。それに比べ、自動車輸送の割合は約90%と高水準のまま。施策は多数とられていても、なかなか結果に結びついていません。モーダルシフトの推進には課題が多く残っています。

課題は何か

モーダルシフトの推進を阻む要因は何なのでしょうか。下段は平成27年に実施されたアンケートの結果で様々な要因が明らかになっています。

資料:平成27年国土交通省作成「モーダルシフト促進・諸問題に関する検討会」データを参照し弊社にて作成

特筆すべきはNO.3の「災害に対する不安」です。これは平成26年10月6日、台風18号による土砂災害が発生し、日本の鉄道貨物の約半数が経由する大動脈が分断される事象が発生し、復旧まで10日かかったことが上げられます。積極的にモーダルシフトを進めていた貨物鉄道利用者において、代替輸送のトラック確保に苦労するなど、モーダルシフト推進のためのボトルネックの存在を再認識することとなりました。

モーダルシフトのこれから

前述のように明らかとなった輸送障害に対する対策は、迂回輸送列車、トラック・船舶を活用した代替輸送の検討、コンテナの途中駅での取り降ろし体制の整備、荷主への情報提供の改善などが検討されています。

また、国土交通省が平成29年7月に発表した総合物流大綱(2017年~2020年)内でも「モーダルシフト」は、実に35ページ中15回も登場するなど、今後の物流の鍵となってくることは、間違いなさそうです。

国内有力企業がトラック中心だった従来の輸送体制見直しに着手しはじめている今、モーダルシフトは転換期を迎えています。