トラックドライバーの「働き方改革」~2つの施策~
「働き方改革」を支える2つの施策
最近話題の「働き方改革」
最近ニュースで「働き方改革」という言葉をよく耳にしますね。
まる見え編集部でも以前、ドライバーの労働時間について取り上げました。
そこでは荷待ち時間が長時間労働の一因となっていることが分かりましたが、この対策として荷待ち時間の記録が義務付けられたというのが、その時の記事でご紹介した内容です。
今回はもう少し踏み込んで、トラックドライバーの働き方改革について、現状を調べてみます。
※過去の記事はこちら!⇒トラックドライバー 長時間労働の中身(2017.09.20)
※関連資料⇒荷待ち時間の記録義務付けに関する国土交通省の発表資料
新しい「荷主勧告制度」のしくみ
荷主勧告制度の運用が2017年7月1日から新しくなっています。
今までも制度自体はありましたが、荷主が関与しているかどうかの判断基準が不明確であったそうです。このため、制度自体は存在していたものの、荷主勧告の発動実績はありませんでした。
新しい運用では、この判断基準の例が示されています。どのようなものなのでしょうか。内容を見てみましょう。
勧告及び警告(トラック事業者への行政処分を行う場合の荷主への措置) 〔勧告〕 トラック事業者に対し行政処分を行うものについては、荷主に関する調査を実施し、その結果、例えば、 ◯過労運転防止措置義務違反の原因が、荷主管理の荷捌き場での恒常的な荷待ち時間の発生であり、かつ、荷主に対し改善を要請しているにもかかわらず荷主が応じず改善がなされていない場合 ◯過積載運行の原因が、積込み直前に荷主から貨物量を増やすよう急に指示され、過積載となることを認識しつつ荷主から取引解消を示唆されるなど断り切れなかったことによるものである場合 など、荷主の主体的な関与の具体例を示し、荷主勧告の判断基準を明確化します。 (以下略)
※国土交通省報道発表資料(2017.06.30)より転載
このように、荷待ち時間の発生が過労運転の原因となった場合などが、制度の対象となりえるようです。
また、過労運転の防止には厚生労働省も取り組んでいます。改善に向けた取組事例の冊子が作成されていますし、「労働時間のルール」と「荷主勧告制度」をあわせて紹介するチラシが作成されています。
※国土交通省HPより |
※厚生労働省HPより |
※関連資料⇒国土交通省HP報道発表(2017.06.30)
「運賃」の考え方が変わった
もう一つ、標準貨物自動車運送約款の改正についてご紹介します。
標準貨物自動車運送約款(以下、標準運送約款)とは、国土交通省が制定するトラック事業者と荷主の契約書のひな形です。2017年11月4日に改正されましたが、大きく変わったのは、「運賃」の考え方です。
これまでの標準運送約款では、「運賃」が指す範囲が不明瞭でした。
これを「運賃」とは運送の対価と定め、その他の運送以外の役務の対価は「料金」とした点が、以前までの標準運送約款と大きく異なります。
※国土交通省広報資料より一部転載 |
今まで明確にされていなかった、
- 積込み、荷下ろしの作業
- 荷主都合による待機
- 棚入れ、ラベル貼りなどの流通加工
といった附帯作業。
これらが「運送以外の役務」、つまり仕事として契約事項に取り上げられました。
これによって、運送以外の役務も含めて労働時間という考え方が浸透し、労働時間のルールをより守りやすくなるかもしれません。
※関連資料⇒国土交通省HP報道発表(2017.10.30)
ますます進んでいく「トラックドライバーの働き方改革」
荷主勧告制度の新しい運用と標準運送約款の改正
どちらも「ドライバーの働き方改革」を進めていく動きの一つといえるでしょう。「ドライバーの働き方改革」を目指して、着々と動きが進んでいますね。
また、運送事業者だけではなく、仕事を依頼する立場の荷主が対応すべきことも示されていることが印象に残ります。
運送事業者・荷主の両方が協調して「働き方改革」が進み、より働きやすく、そして安全な社会になるといいですね。